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現代の機会探索

各業界でのデータ標準化の進展

公開日:2026/9/9

最終更新日:2026/9/18

企業の業績を上げるのに、「需要予測や業務の効率化に、AIを活用しよう」と考えたとする。

法人向けの産業機械の製造業で、機械の性能が多様だが、どの性能をどれだけ伸ばすと、納品先の工場での生産性向上にどれだけ役に立ちそうなのか分からない。過去データを蓄積してAIで次の性能改善の取り組みに対してレコメンドを出させたい。

消費者向けのサービス業で、扱う備品やシステムは沢山あるが、様々な仕入れ先から集める備品・システムの様々な機能をどう評価し、どう組み合わせれば顧客の満足度が高まりそうなのかよく分からない。過去データを蓄積してAIで次の性能改善の取り組みに対してレコメンドを出させたい。

等々のユースケースは考えられるが、いずれも自社を超えた業界内データを使わなければいけないことが早速明らかになる。ここで企業ごとにデータは様々に異なる。同じデータ項目を指していそうだが項目名が微妙に違う、単位が違う、単位は同じでも測定手法が違う、測定手法は同じでも測定タイミングが違う…等々のトラブルに見舞われる。

データがバラバラなので、共通的なデータ基盤を作るITシステムは世の中に売られているが、使いたいデータを一元的に読みこませてAIで有効活用することが結局できない。まずはデータ標準化か…社内の部署に声をかけ、社外の会社にも何とか話を伝えたい…

そのような場面が、今おそらく日本中で大企業から中小企業まで津々浦々起こっている。西暦やメートル法といった単位の標準を世界で広く普及させた歴史的な取り組みの各種業界バージョンが、今まさに進行中なのである。

業界と官庁の取り組み

おそらく、AIへの課題意識が強い人々が多く居て団結力のあった業界なのだと思うが、先進的な業界では既に企業を横断したデータ標準化に取り組んでいる。そのとりまとめには官庁も乗り出している。ざっと眺めただけでこれだけある。

これらの進展状況は異なるが、大体において業界内の各社が扱うデータについて集まって話し合い始めた、或いはドラフトが展開された位ではないかと予想される。参加している各社が海外拠点のデータまでを標準化の対象にするかどうかは今後議論されるだろう。
仮に国内部分だけでもデータが標準化された場合、いつぐらいに実用が始まるのだろうか。

標準データの実用時期

日本郵政はその巨大な郵便事業のデータを標準活用する取り組みを公開している。

その公開資料によれば(ウェブのロゴからは総務省関連と言えそうだ)、2022年にデータ活用の専用組織が出来て、2025年にデータ活用が事業の中で実現している。3年くらいの調整期間がかかったということだろう。

規模こそ一つの業界レベルだろうが、共通の上司を持つ組織にしてこの所要期間なので、最近作られたデータ標準化の取り組みというのは2030年前後に実用化という成果が出るのではないだろうか。

活用手法の予想

おそらく、標準化されたとなっても、サプライチェーンを見渡せばデータはマルチクラウド且つ膨大な分量となっている。単一のクラウドにまとめなおして一元化するのは現実的な打ち手とならず、保管場所は分析の時ぐらいに必要な分しか動かさずにすませる、データメッシュの構想が採用される。

以前の記事でグローバル拠点をまたいだサプライチェーンのデータ活用を検討しても同じ事態になるであろうことを述べたが、サービスとしてはDatabricks、Microsoft Fabric、SnowflakeといったAI/データ基盤をクラウド上にのせて運用する形になるのではないか。そしてこの導入は、記事にも画面で記したが利用したいデータや加工ロジック・データ配布先が決まっているのであればすぐに実施可能だと思う。

実用化の持つ経営に対する意味

2030年頃の時点でデータの活用方法をうまく考えられて事業に組み込むことが出来る企業が多く出たら、日本企業の多くで効率化の底上げが起こるのではないか、すなわちAI/IT活用が急速に進むのではないかと思う。

これは各業界に属する中堅中小企業までも利用できるデータの拡大という形で影響すると思われる。業界レベルで見て金融業界からの経営支援を行う場合にも注目すると利益になりそうな話でもある。

一方で、個々の企業にとってみれば一つの競争の重大局面である。業界レベルでデータがより流通しやすくなった場合に、「データをいかにして活用し業績向上につなげるか?」という経営力が問われるからだ。

一つの企業内であっても、部門間の連携は、他社から真似されにくく競争優位の源泉になるとされる(「企業戦略論」ジェイ・バーニー)。企業をまたいだ連携はなおさら強力だ。バーニー教授はVRIOフレームワーク(経済価値、希少性、模倣困難性、それらを活用する組織能力の頭文字からVRIO)で企業の競争力を説明しようとするが、多様なデータから事業に価値のあるユースケースを考えて、その運用を組織の業務に組み込むというのは模倣困難な資産の作成であり、それを活用する組織能力の構築である。競争優位の構築に他ならず、うまくいけば持続的に業績を業界平均以上に高めることにつながる。これには下記の要素を含むプロジェクトの成功が求められる。

  • 構想する
    • 経営に意味があり実現可能そうなユースケースとアーキテクチャを描く
    • 実験して実現できそうな構想を定める
  • システムを作り出す
    • データ取得ルートを交渉して築き上げる
    • アプリケーションやAIモデルを作り出す
  • 業務と組織を作り出す
    • 部署を設けて人を集める
    • 業務ルール・マニュアルを定める
    • 評価指標を定める
    • 教育する(データ分析担当者、AIモデル運用担当者など)

おそらく多くの企業が今後数年のうちに取り組み、中期経営計画で優れた構想が語られるようになり、やがて実際に実現するだろう。
今後中長期で楽しみなテーマである。

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