PEファンドが、どこか中堅中小企業に投資したとする。都市部でも地方でも、その現場には今ではほぼ必ず外国人労働者がいる。製造業でもサービス業でも、ほぼ100%共に働く環境だ。高度技能を習得して活躍する人々のインタビューは多く存在する。活躍してもらえている様子が伝わってくる。(ビルメンテ協会の取材、建設業関連社団法人の取材、など)
2025年10月末の状況を厚生労働省がハローワーク経由(外国人労働者の就職/退職の時にハローワーク届出が必須なので信頼性が高い)で集計した厚生労働省公表資料によれば、250万人を超える人数が幅広い業界で仕事に携わっているのだ。

しかしそうした企業が日本人の雇用と同様に関係性を築き、スムーズに運営できているわけではない。既にメディアで時折報道されているが、米国の国務省が言及するほどの人権問題の温床になっているのだ。下記は2025年の国務省報告の一部である。
”バングラデシュ、ブータン、ビルマ、カンボジア、インド、インドネシア、ラオス、モンゴル、パキスタン、フィリピン、タイ、ウズベキスタン、ベトナムからの技能実習生は、過去5年間にわたり、漁業、食品加工業、貝類養殖業、造船業、建設業、繊維生産業や、電子部品、自動車、その他の大型機械の製造業で職を得るために、労働者が支払う過大な負担金、保証金、または不明瞭な「手数料」という数千ドルの費用を母国の送り出し機関に支払ってきたと報告した。
技能実習制度の一部の雇用主は、明記された技能実習制度の本来の目的に反して、実習生を技能の教授や育成が実施されない仕事に従事させている。事前に合意した職務と一致しない仕事に就かされている技能実習生もいる。
これら40万人の労働者の中には、移動と通信の自由を制限され、パスポートとその他個人的な法的書類を没収され、強制送還や家族への危害といった脅しを受け、身体的暴力、劣悪な生活環境、賃金差押え、労働搾取目的の人身取引を示唆する状態に置かれた者もいた。技能実習生に「処罰合意」への署名を義務付け、妊娠したことなどで労働契約を履行できない場合、何千ドルもの違約金を科す送り出し機関もあった。”
念のため言及するならば、この問題はここ1、2年で問題視されたものではなく、調べた限り少なくとも2019年から連続で報道されていた(2019年の人権報告書、2023年の人権報告書、など)。
米国の国務省だけではない。日本のメディアからもリアルな取材が複数報道されており信ぴょう性は高い。外国人雇用協会でそのような報道をまとめたページがある他、例えば2021年10月の文春報道は厳しい状況を伝えている(念のため、この報道にある企業はベインキャピタルの経営支援を受け、経営体制も刷新されて改革が続けられている)。
つまり、中堅中小企業の経営支援に参入しようとすれば、ここに見られるような問題がオペレーションを安定させ高めていこうと考えるうえで課題になる確率がそれなりにあるのだ。
それでは、対処をどうするのか。まず参入前であれば法務DDであらかじめ明らかにして、参入するにしても問題の解消にかかる費用は買収価格から控除しておきたい。(法律に従って支払うべき賃金との差額、その他諸々)
参入して問題に向き合う際、オペレーションの現場での意思決定、経営陣のガバナンス失敗に対処しなければならない。おそらく人手不足の深刻さなど様々な要因で外国人労働者に働いてもらってこそ成り立つオペレーションなのだろうから、経営体制を刷新のうえ、厚生労働省が推奨する共生の在り方のようなオペレーションの工夫を一つ一つ積み上げることになる。この計画を織り込む必要がある。
ただ、この対策を成し遂げて優れた企業現場を作り上げたなら、その功績は経済的なものにとどまらず米国の問題視するような日本の人権問題改善にもなる。やりがいの大きな改革であると思う。