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現代の機会探索

サプライチェーンの管理技術進化と金融業界

公開日:2026/8/28

サプライチェーンの管理技術は、この100年で大きな成長を遂げた。1921年に、当時から米国の大手企業であり最先端の技術を用いていたに違いないGM(ゼネラルモーターズ:自動車会社)は、より過不足なく自動車生産を行うため、スローン社長のもとで次のような経営指標の管理開始を決定した。(「GMとともに」アルフレッド・スローン)

  • 毎月10日、20日、末日締めで自動車の生産台数と販売台数を各事業部長から本社に報告する
  • 毎月末日締めで受注残、工場の完成車在庫、ディーラー在庫を各事業部長から本社に報告する

2026年現在では、日本の平均的な製造業者が、日次で管理できているような項目だろう。PCを開けばダッシュボードに経営指標は並んでいる。しかも図表で分かりやすく見ることも出来るし、管理する経営指標はサプライチェーン上のより広い領域のより多くのデータ項目をカバーし、その連携速度も高まり続けている。

それでは、このような管理技術の進化は、長期的な視点にたって俯瞰した時、どのように進んでいるのだろうか?

テクニウムという概念

これを考えるのに優れているのは、テクニウムという概念である。この言葉は、世の中に存在するテクノロジーを総体としてとらえたもので、WIRED誌の創業者兼元編集長のケヴィン・ケリーが著作で用いている。

個々のテクノロジー(例えば電報、タイプライターなど)には発明され、社会に普及し、やがて次のテクノロジーの普及とともに利用されなくなっていくというサイクルがあるが、テクニウムとして技術総体のパフォーマンスをとらえると、例えば通信効率が高まり続けている様子や、通信手段の多様化がどんどん進んでいる様子、通信に用いられているエネルギー消費の増加が把握できる。

この観点でテクニウムの動きをとらえたのが、主な著作である「テクニウム」、その派生形の「インターネットの次に来るもの」である。地球全体の消費エネルギー増加や半導体チップの性能向上(ムーアの法則)、データ総量の増加、社会全体の経済規模の増大、ソフトウェアのコード行数増加、科学論文の年間発表総数、新技術の普及速度、等々を観測しており、確かにそれらをみるとテクノロジーは総体として活発化し続けている。

ケヴィン・ケリーがテクニウムの向かう先として考えている方向性は、更なるテクノロジーの多様化や、地球規模でのネットワークの深まり(より多くのデータがより広く連携される)、更なる非物質化、そして人間社会の可能性の増大である。そしてテクニウムの進化の速度は加速し続けている。一世代前の技術の上で、続々と進化を遂げているのだ。

テクニウムの進化と金融業界

このようなテクニウムの進化は、サプライチェーン管理の技術を次々に刷新している。21世紀だけをみても、クラウドコンピューティングの登場(2005年にAmazonはEC2とS3の提供を始めた)、スマートフォンの登場(2007年にiPhoneが米国で発売された)、生成AIの登場(ChatGPTは2022年にサービスを開始した)など経済活動の景色を変える発明が次々に起こり、その導入が進んでいる。

金融業界はこの発明と導入に対して、ベンチャー投資や企業の設備投資への融資など、これまでも貢献してきた。
「①ベンチャー企業を中心とする研究開発⇒②ベンチャー企業を中心とする製品化⇒③既存企業による導入⇒④既存企業が成果を出して更に導入(⇒既存企業が次のテクノロジーに入替え)」、というサイクルを思い描いた時、①~④のどこに対しても資金提供が出来てきたのである。

そしてそのような金融サービス(ベンチャー投資など株式を対価とする資金提供や、設備投資などに用いる資金の貸付)はテクニウムの加速を想定すれば業界全体としては巨大化することが想定される。
足元をみれば日本でベンチャー投資として供給される金額はNEDOによれば2024年におよそ1兆円であるほか、彼らが規模を大きくして上場した後についても、2026年の日本の株式市場で話題になった半導体関連企業の時価総額上昇のように株価を高め、それから新株発行をした場合には、株式を対価とする調達額を実現することになる。
融資で言えば、J.P.モルガンはAIデータセンターに関する記事で、既に何件も巨額融資案件に参加したことを述べている(四半期決算でも貸出金額の伸びが見られ、収益は好調だった)。

この他の金融業界からの支援はありえないだろうか、と考えるとき有力策となるのがPEファンド投資であり、経営に参画して実際にテクニウムのトレンドを加速させることである。

先のステップで、①②を強化することにかけては、ベインキャピタルのキオクシア支援は代表例の一つであり続けるだろう。
しかし③④には、より多くの案件があり、更に機会があると思う。もちろんテクニウムの進化の方向性は多様であるように、企業によって効果的な施策も多様だと思うが、サプライチェーン上のデータ管理をより広範囲なバリューチェーンに広げ、多い項目をよりリアルタイムに取得してAIエージェントに接続する流れは、それを可能にするIT技術進化のトレンドも追い風になり多くの場合効果をもたらすと思われる。

仮に2026/8時点の先進事例をあげるなら企業間の予め選んだデータの連携だろう。データ自体の移行は伴わずセキュリティ懸念が少なく、ほぼリアルタイムで閲覧やAIへのインプットを可能にする。データメッシュというワードで知られAmazonの解説もある。

特に強力なツールはDatabricksやSnowflakeといったデータ/AI基盤サービスだ。これらがこのサービスを契約していない協力会社・取引先にまでも及ぶデータ連携を容易にしている。ビール大手のABBは、Snowflakeの事例で社内のデータを社内各部署および外部ベンダーに連携する施策を取っている。Databricksは機能説明を2026/6に行い連携の容易さをアピールしている。これらは各プラットフォーム上で全てAIエージェントに利用させ、業務の高度化に役立てることが出来る。
この手前で、既存の散在するデータをAWS、Azure、GCPといったクラウドに乗せて、まずは持続的に可視化するだけでも付加価値になるという状態の企業も多いと思う。このような技術は数か月で実装でき、従量課金で運用できる。冒頭でアルフレッド・スローンが取り組んだように経営指標の把握は業績向上につながる取り組みだ。問題も機会もすぐに把握して対応できる方が良い。

PEファンドは、直接投資先企業の経営に参画し、業績向上につながる施策を実行できる金融サービスの業態である。日頃から業績改善に役立つ知見を収集しておき、最新のテクノロジーを取り入れていない企業まで導入し双方が利益を享受するという機会に特に恵まれた業界だと思う。

テクニウムとAI

最後に、最近のデータセンターの大型投資、AIエージェントの増大など、日々の経済ニュースはテクニウムの観点からみた未来予測をどんどん現実にしている。今のテクニウムの最前線にある技術の一つは、間違いなくAIである。加速度的な技術そのものの進化、加速度的な社会への導入が現在進行形で進んでいる。

世界の経済規模は増加し続けている指標の一つだが、その成長は既に地球上の人間の数の増加速度を上回っており、今年の野村総研主催の講演でもケヴィン・ケリー氏が言っているが、やがて経済活動の主体はAIエージェントに移行していくことになるだろう。今後の経済規模成長は人口増加が支えるのでなく、人がより多くのAIエージェントを使ってその活動を増加させることで続くのである。

金融業界には様々な形でAIの開発・導入のチャンスがあると思う。

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