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産業史の探究

飲食業界とPEファンドの協力関係

公開日:2026/8/4

最終更新日:2026/9/30

飲食業界とPEファンドの関わり

飲食業界では、PEファンドの事例がそれなりに目立っているように思う。大手チェーンだけみても、すかいらーくやケンタッキー、デニーズ、珈琲館やカフェベローチェ、やや店舗数が少ないチェーンでも磯丸水産、わらやき屋、築地食堂源ちゃん等々多くの投資事例がある。統計を見たことはないが、かなりの協力関係にあるだろう。

飲食業界へのPEファンド案件は支援パターンがあり、投資先企業のIRを辿るとだいたい下記をいくつか組み合わせているようだ。そして3~7年程度で業績を回復させ、株価も上げて案件を完了するようなイメージである。

  • コスト削減:不採算店舗を可視化して撤退、物流の集約、店舗オペレーションのDXやメニューの削減で効率化
  • 既存店売上増:単純な値上げや高価格帯メニューの増加、マーケティングを通じた売上増
  • 新規店舗売上創出:自社独自もしくは他社との連携による、新規出店、海外展開、新業態獲得・食品加工など新事業進出による売上増
  • 全般:経営指標の可視化や需要予測の精度向上、中期経営計画策定

これらを通じて、オーナー創業者一族の強力なカリスマ体制から、チーム体制に移行して持続的な成長に備え、規模を拡大して大企業に育っていくのだ。

飲食をはじめ、建設や中小不動産といったローカル産業にはカリスマ的なリーダーシップで企業を大きくしようとする創業者の割合が大きいように思う。これとチーム経営体制への移行を得意とするPEファンドの性質を組み合わせて考えると、こうしたローカル産業とPEファンドの業界同士の協力関係は、今後も長続きする内部的な要因があると思われる。

次に業界の外部環境要因をみても、飲食業界は市場全体を大まかに見れば、特に都市部や地方観光地であれば訪日観光客からの売上も見込め、海外進出の成功例も出ていて、今後も売上成長の見込める業界とみて良さそうだ。
中小企業庁資料によれば新規創業も比較的多く、投資対象になりうる企業が供給され続けているということからすれば、PEファンド投資案件が今後も多く出てくる業界だろう。確かに、グルメバーガーや新たなコンセプトの居酒屋など、街を歩けば次から次へと新しい店舗を見かける。

美味しさの源泉に関するすごく弱々しい仮説

この業界間の協力関係は、料理の美味しさがあって収益を期待できるからこそ保たれる。PEファンドからすれば、数多ある中で勝ち残った、創業家の努力によって顧客を獲得出来た飲食チェーンに資本参加して上記の施策を打てばよいのであって、原因究明は特に気にならないと思う。ここからは消費者の興味による探究だ。

日本のチェーン店は米国巨大チェーン程ではないが他国に進出している。米国の寿司チェーンや和食チェーン、アジアに進出したハンバーガー、居酒屋など事例が21世紀に入って増えているのだ。厳密な調査ではなく、ここは体感と生成AIとの対話に頼っているが、下記は成り立つと思う。

  • 米国の米国以外からのチェーン店進出では、地続きのカナダに次いで多い国の一つ
  • 東南アジアへの域外からのチェーン店進出では、米国についで多い国の一つ

それでは日本の飲食店の料理の水準はどうして海外への進出が狙えるほどに高いのだろうか?チェーン店かグルメな店かを問わず、日本のレストランの料理は海外旅行先で食べる料理より多くの場合美味しいと思う(日本の味覚だからというのもあるかもしれない)。

美味しい料理=良い材料+良い調理技術+高度な美味しさ判定能力、と考えて探究する。良い材料、高い調理技術があって様々な料理が可能になり、その中から優れた美味しさの判定能力で選定して美味しい料理が出来ると思えるからだ。それぞれ更に下記に分解する。

  • 良い材料
    1. 四季のある土地でとれる食材
    2. 新鮮なまま届けられるコールドチェーン
  • 高い調理技術
    1. チェーン店であれば、大企業のセントラルキッチン方式での高品質での加工
    2. チェーン店であれば、調理方法の研究開発&マニュアル化
    3. 個人経営であれば、職人技の伝達
  • 優れた美味しさの判定能力
    1. 美味しい料理を食べ続けることで得られる判断力
    2. 多様な料理を食べることで得られる美味しさの多様な評価軸

「良い材料」は世界の大半の国・地域で共通だと思う。どの土地にも美味しいものは産出されているだろうし、先進的な設備を持てばコールドチェーンも出来上がる。
「高い調理技術」も、自由に企業活動できる先進国ならどこでも競争の過程で出てくるだろう。ある程度の資本力があれば機械を作り研究開発に時間をかけてメニューや調理オペレーションを作り出すことも出来る。
「優れた美味しさの判定能力」は、人口ごとに同じような割合で味覚の優れた人は出てくるのではないかと思える。チェーン店が多くの人を雇ったらそれなりの能力を組織として持てるのではないか。

属性だけ見ても差が見当たらない。それでは他に、上記の3つを国全体で底上げするようなイベントはなかったか?

これに関して戦後日本の要因で、一つ関わりがあったと思えるのは1964年の東京オリンピックの厨房のエピソードだ。

日本全国の料理人を300人集め、帝国ホテルの料理長が直伝のレシピおよび料理の技を共有したという。村上信夫さんという料理長はいまだに何年かに一度ニュースになる影響力を持った人物で、海外で料理を学んで帝国ホテルの総料理長を任されるまで技を磨いて、1964年東京オリンピックの料理のレシピを作り出した。プロジェクトXにも特集されており、そこではこのレシピを持ち帰って地元のレストランの料理水準を高めたという当時の料理人の一人も登場する。これが全国津々浦々に及んだとすれば、村上さんのレシピは日本を広範囲で底上げしたはずだ。

また、この人は料理番組でも惜しげもなく料理方法を指南していた。リンク先のインタビューで語るには、やり方を教えたところで同じように出来るものではないし、料理レベル全体の底上げになるのだという(コンサル業界では大前研一と堀紘一が著作で同じようなことを言っている)。

考えられる機会

仮に料理イベントが飲食業界のレベルを底上げしたというのであれば、同様の底上げを狙って起こせるのではないか。日本のチェーン店の海外進出と1964年にタイムラグがあり、進出したのは寿司や和食など東京オリンピックで出された料理と違うなど因果関係のつながりは非常に細いようにも見えるが、属性以外の要因を考えると、味覚を磨いたなど何かしら影響はあったのではないか。

日本の飲食業界をもう一度底上げするのに、多くの料理人を全国から集めて本当に腕の立つシェフの監修のもとに大量の料理を作るイベントを開いたら有効かもしれない。1964年のオリンピックは2週間だが準備を含めたらもっと長い期間が300人の料理人にとって良い修行になったはずだ。

仮に300人のシェフを全国から募って1か月雇うとしても相当な開催費用がかかりそうだが、どこか飲食業界の底上げで利益を得る業界の団体が開いてくれれば面白い試みになると思う。(面白そうなので非常に細い因果関係の仮説を敢えて置いてみた次第である)

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