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産業史の読み解き

飲食業界とPEファンド

公開日:2026/8/4

飲食業界では、PEファンドの事例が多い。大手チェーンだけみても、すかいらーくやケンタッキー、デニーズ、珈琲館やカフェベローチェ、やや店舗数が少ないチェーンでも磯丸水産、わらやき屋、築地食堂源ちゃん等々多くの投資事例がある。

飲食業界へのPEファンド案件は支援パターンがあり、投資先企業のIRを辿るとだいたい下記をいくつか組み合わせているようだ。そして3~7年程度で業績を回復させ、株価も上げて案件を完了するようなイメージである。

  • コスト削減:不採算店舗を可視化して撤退、物流の集約、店舗オペレーションのDXやメニューの削減で効率化
  • 既存店売上増:単純な値上げや高価格帯メニューの増加、マーケティングを通じた売上増
  • 新規店舗売上創出:自社独自もしくは他社との連携による、新規出店、海外展開、新業態獲得・食品加工など新事業進出による売上増
  • 全般:経営指標の可視化や需要予測の精度向上、中期経営計画策定

飲食業界は大まかに見れば都市部や地方観光地であれば訪日観光客からの売上も見込め、海外進出の成功例も出ていて、今後も機会の多い業界と言えそうだ。中小企業庁資料によれば新規創業も比較的多く、PEファンド投資案件が今後も多く出てくる業界であるだろう。

ここで、日本の飲食店の料理の水準はどうして海外への進出が狙えるほどに高いのだろうか。
美味しい料理を出せるようになるというのは、先に挙げたような施策では難しい。しかし集客力の強い大手チェーンならともかく中小のチェーンであれば味は経営競争力を占ううえで重要なポイントである。かつてPEファンド幹部がどこかのインタビューで、料理を実際に食べてみて投資を決めると言っていたが、効率化をしたとしても美味しくなければ続かないので確かに重要なポイントであろう。

一つ関わりがあったと思えるのは日本全国の料理人を300人集め、帝国ホテルの料理長が直伝のレシピおよび料理の技を共有したという1964年の東京オリンピックの厨房のエピソードだ。村上信夫さんというシェフはいまだに何年かに一度ニュースになる影響力を持った人物で、海外で料理を学んで帝国ホテルの総料理長を任されるまで技を磨いて、1964年東京オリンピックの料理のレシピを作り出した。プロジェクトXにも特集されており、そこではこのレシピを持ち帰って地元のレストランの料理水準を高めたという当時の料理人の一人も登場する。これが全国津々浦々に及んだとすれば、村上さんのレシピは日本を広範囲で底上げしたはずだ。

また、この人は料理番組でも惜しげもなく料理方法を指南していた。リンク先のインタビューで語るには、やり方を教えたところで同じように出来るものではないし、料理レベル全体の底上げになるのだという。コンサル業界では大前研一と堀紘一が著作で同じようなことを言っている。自社の後輩には甘くないが業界全体の底上げにはなるような思想で、業界リーダーの貫禄がある。半導体など製造業では無いだろうが、担当者の感覚も加わって価値が作り出されるサービス業ではたまに見られるパターンである。

村上さんだけではないと思うが、日本の飲食店のレベルの高さには偉人による技能の追求と拡散があったのではないか、という仮説であった。