利上げがいよいよ現実のものとなり、今では長期プライムレート(優良企業に貸す時の金利)もフラット35(住宅ローン)の金利も上がってきている(SBIホールディングスの金利サイト)。
- 長期プライムレートは2016~2021年末まで1%程度だったのが2025年には2%を超え、2026年には3%を超えた
- フラット35最低金利は2023~2025年まで2%付近だったのが2026年には3%を超えた
金利が1%増えるということの重みは、不動産投資を考えてみると分かる。1億円を期間30年の月々元利均等払い(毎月の元金+利払い合計額を一定にする支払い方法。支払額安定が好まれて一般的)で借りる場合を考えてみると、30年間の総支払額には元本に対して15%ずつ差が出る。
- 金利1%の場合:約1億1,580万円(月々約32万円返済)
- 金利2%の場合:約1億3,300万円(月々約37万円返済)
- 金利3%の場合:約1億5,180万円(月々約42万円返済)
(信じられないかもしれないが、金融機関の返済シミュレーションで計算するか、「元本1億円・30年・元利均等払いの場合の総返済額を、1%、2%、3%で算定してください」とお好みの生成AI(性能が低いと計算を間違えるが…)に打ってみると良い。)
これは借入を用いて不動産を投機的に取引する投資家にとっては大きな意味を持つ数値だ。仮に家賃収入を見込んで投資するとして、家賃を一気に引き上げることは難しい。家賃収入では説明がつかない高値で売却しようとしても、更なる値上がりを見込む他の投機家は金利が上がり、コストが増えるほどに少なくなっていくだろう。
ここに国土交通省の不動産取引データベースがある。調べたい都道府県を指定し、物件種類や期間を指定して、「一覧表示」ボタンを押すだけでその条件に合う取引が出てくるという有用なものだ。「一覧表示」ボタンを押した後には「取引件数推移」というボタンが現れるが、ここではその種類の不動産の取引件数推移が直近5年程度について出てくる。これを見ると、不動産投資で多いマンション取引について次のような結果が出てくる。
- 東京都は2026年になって、それまで四半期件数が3万件程度だったのが、2.1万件に減った
- 神奈川県は2021~2026年にかけて、四半期件数が1.2万件程度で推移している
- 愛知県は2021~2026年にかけて、四半期件数が5千~6千件の間で推移している
- 大阪府は2021~2026年にかけて、四半期件数が1.2~1.5万件の間で推移している
- 福岡県は2026年になって、それまで四半期件数が5千~6千件程度だったのが、4千件に減った
この事実で何が読み取れるだろうか。
考えられる仮説の一つは、「投資目的でのマンション売買件数の減少が起こった」ということだ。東京は日本で数少ない人口増加地域であり、投資家が需要予測を気にするのであれば東京に投資が集まっていたことは容易に想像がつく。実需であれば、例えば家族イベントなどが背景にあるであろうから、金利が上がったとしても購買力の届く範囲なら買うであろう(まして、金利が下がる気配がほとんどない状態である)。
ここでPEファンドに関わりそうな点は、中小企業のなかにも不動産投資に熱心な企業があるということだ。本業と多少関係がある場合もある(本業が建材販売で、不動産に詳しいなど)が、なくて資産運用をしているケースもある。このような企業が家賃に見合わない値上がり目当ての投資をしていた場合、財務ダメージを受けることになる。1990年頃にバブル崩壊で財テク企業がダメージを受けたが、その構図が起こるのである。
財務ダメージを受けた場合には、本業の設備投資が弱まり中小・中堅企業の生産性向上に悪影響が出る懸念がある。不動産の担保余力が減っていれば銀行貸出しも細るだろう。このような財務状態で本気で設備投資を続けようとした場合、頼れるのはPEファンドに株式を買い取ってもらう出資ということになる。
今のマクロ環境はそのニーズを高める方向性にあり、具体的には金利が上がればニーズが高まる構図である。事業を見定めた投資が進むことを期待したい。