バブルを気にする者にとって、気になるのは債務サイクル(債務残高の増減にサイクルが見られることから出てきた用語)の中の現在地である。米国の事業会社や家計の債務は、確かに増減を繰り返してきていることがFRBのデータからわかる。
この理由は恐怖と強欲のサイクルから説明されることがある。損失への恐怖がある市場では慎重に、本当に債務を返済できるような有効活用(設備を買って生産を増やすなど)に限って借入が起きるのだが、上手くいくことが続いて段々と人々が強欲になると、あまり有効でない資金使途にまで借入が起こるようになり、返済が滞りはじめて担保没収や資産投げ売りといったパニックに陥り(金融危機)、損失への恐怖が蔓延する。以下ループする、というような理屈である。
この類の説明の中で私が本当に説得力があると思ったのはレイ・ダリオやハワード・マークスといった長く活躍するファンドマネージャーによる説明で、YouTubeにはレイ・ダリオの経済の仕組みという動画があって無料で閲覧できる。著作にはBig Debt Crisesがある。
このサイクルからPEファンドを見るとき、「投資金額は投資対象の企業に対して妥当なのか?」という点はとても気になる。これをきちんと調べようと思ったら、投資時点における借入を差し引いた事業正味の投資額と事業の過去数年(証券投資の父ベンジャミン・グレアムならば過去7年程度を見るように言うだろう(「賢明なる投資家」参照))の利益額を調べ、本当に見込んだバリューアップが実現できたのかをみたうえで、「強欲」モードになってしまっていないか(楽観的すぎる値付けをしていないか)、あるいは「恐怖」モードになってしまっていないか(悲観的すぎる値付けをしていないか)といったことを調べることになりそうだ。データがあれば、個別案件の細かい判断は難しいものの、「似たような案件が以前よりだいぶ高めに値付けされているようだ」など、大体の雰囲気は察せられるだろう。
より簡易的に調べるとすれば、PEファンドが投資によって実際に利益を出せているかを見ることも考えられる。これについては日本プライベート・エクイティ協会の調査結果が3年遅れ程で出ている。2023年末時点のファンド実績をみると、まだまだ利益をあげられる案件に投資出来ているように思える(この調査の難点は、EXIT先の投資家が楽観的になってしまっていて高く売れただけの可能性を排除できないことだ)。
過度な楽観や恐怖を避けて見通しをつけるため、頭の片隅にでも、相場観は見ておきたいところである。ちなみにサイクルのどの位置にいるのかについては、分かるはずがないという説とだいたいは分かるという説があるが、「だいたいは分かる」という側のハワード・マークスやレイ・ダリオが実際に金融危機局面で利益を上げていることから、必要なデータを独自に集めていけば分かるはずなのだ、と思える(「市場サイクルを極める」ハワード・マークス)。